輪島塗

輪島塗

輪島塗は、素材はもちろん、デザインや124にも及ぶ工程、すべてに妥協を許さないつくり手の思いの結晶です。

輪島塗とは

輪島塗の「堅牢優美」を支える秘密

小文字のjapanは漆器を意味し、輪島塗はその代表です。美しさと共に丈夫さを併せ持ち、「堅牢優美」と言われております。それは木地に生漆、米糊、焼成粉末珪藻土(輪島「地の粉」と呼ばれています。)を混ぜた下地を薄く何層も塗り重ねることによって生み出されます。江戸時代享保期頃にこの技術が確立したと言われています。


分業制 輪島六職

丁寧な工程を積み重ね製作される輪島塗は工程ごとに専門化した熟練の職人たちによる分業制によって製作されています。工程は大きく分けて木地、きゅう漆(漆を木地に塗ること。)、加飾に分けられます。更に分けられ「輪島六職」と呼ばれる分業システムが江戸時代に完成しました。塗りの工程だけで24工程、完成まで124工程を数え、数ヶ月から一年位の時間が必要です。

信用が繋ぐ独特の販売手法「輪島講」

輪島塗の特色ある販売手法の一つに「輪島講」があります。講とは、相互扶助の目的でお金を出し合うことで、輪島塗の月賦購入のような機能を果たします。しかしそのお世話が大変で、信用が無いと絶対に成り立たないシステムです。正に輪島塗の品質を確かなものにした下さったご先祖様のお陰と言えましょう。信用を引き継ぐと言う意味で「我々は永遠の中継ぎ」と言う漆器店の方もおいでます。

工房としての街

輪島の街を歩くとさまざまな所で輪島塗に出会うことが出来ます。輪島塗は完全な分業制によってつくられており、外観は普通の家に見えても職人が住み工房が営まれています。輪島塗は、そう言う職人たちの家々を巡り製品として仕上げられて行くのです。また輪島には輪島塗に関係する公共施設も多くあります。総合的な漆文化発信拠点である石川県輪島漆芸美術館、体験工房もある輪島塗の新たな交流施設である輪島工房長屋、キリコと呼ばれる輪島塗で仕上げた大きな奉燈を数十基展示する輪島キリコ会館などです。輪島に来ていろいろな輪島塗に出会って頂きたいと思います。

漆器の取扱

輪島塗製品は下地を何層にも塗り重ねて仕上げており、普段使いも出来る丈夫さを備えていますが、漆は生きているとも言われるくらいですから美しさを保つには気配りも必要です。・電子レンジは使用しない。(木製品であるため。)・乾燥機の使用はなるべく避ける。(軽く柔らかい布で拭く。)・高温や直射日光のしたは避ける。などの気配りでより長く使えます。

輪島塗の加飾 蒔絵・沈金

輪島塗の代表的な加飾技法に蒔絵と沈金があります。蒔絵は筆に漆をつけて絵を描くことを主体とするもので、金粉、銀粉などを上から蒔き、磨きあげるもの。沈金はノミで塗り面を掘り込み絵を描くもの。彫りは深く、堅牢な下地層と良質な塗りによって可能となっている。彫り跡に金箔等を入れるなどにより模様を作り出します。

輪島塗と修理 「なおしもん」

修理に出された漆器のことを輪島では「なおしもん」と言います。輪島塗は、傷や傷み、割れ、欠け等があっても修理、修復していつまでも使えます。 修理だけでなく、模様を付け足したり、模様を取り払ったり、黒いお碗を朱のお椀へ塗りかえるなど、「リメイク」することも可能です。下地や塗がしっかりとしている輪島塗だからこそ出来ることです。大切な輪島塗を長く使って欲しい。自分の納めた製品に責任を持ち、お客様との信用を大事にしたいとの思いから、輪島の漆器店では「なおしもん」を受けて来たのです。より思い出深い漆器へと変化していくことでしょう。

漆かき

ウルシの木の樹皮にキズをつけると、そのキズをふせぐためウルシは独特な樹液を出します。この樹液を集めることを「漆かき」と言います。植えてから10年から15年たち、10メールほどに成長したウルシから何回かに分けて採取します。1本の木から採れる樹液はおよそ150gほどしかとれない貴重なものです。木の皮などのゴミや水分を取り除き、精製を行なうことにより職人が漆器製作に使う漆となります。

輪島町家(塗師屋造)

塗師屋の家には、独特の塗師屋造りと呼ばれる職住同居の建築があります。その特徴は平面配置にあり、一般の町家とは逆に、住居が前方、作業場が後方と云う人前職後の配置となっています。輪島塗は文化産物であり、文化的背景無しには生まれません。職人たちは文化的空間である前の住居部分で文化を皮膚で吸収し、奥の作業場での輪島塗の製作に生かすのです。

美食と輪島塗の器

世界農業遺産「能登の里山里海」の中心地であることを自負する輪島。そこでは四季折々の豊かな山海の珍味に恵まれ、季節の行事とともに伝わる特色ある郷土料理から、フレンチ、イタリアンまで様々な美食を堪能できます。その美食を輪島塗は華やかに演出し、味覚を一層引き立てます。輪島漆の器は体にやさしく、心にあたたかい。輪島塗独特の繊細で丁寧な造りは、唇に触れる口縁のタッチを穏やかにして、料理の風味を引き立て、心豊かな時間と空間を演出するのです。

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